たつの昔話「香山村の猫の復讐」その4(完)

男は癖の袂の埃糞ををほじくると、香山村の久兵衛さんのとこもまですっとんでいったんや。

「久兵衛さん、えらいこっちゃ。あんた、鶏を、今朝揖保川へ流しましたんか」

 久兵衛さんが鶏を流したというのを聞くと、松の木の下での夢の話を一部始終聞かせたんや。

 久兵衛さんは、びっくりしたで。顔がやな、鬼灯みたいに、青うなったり、赤うなったりするんや。ふんふんゆうて聞くとそら動きが早かった。家来を呼び集めんや。

「逃がすなよ」

 そないゆうと、家来たちは、桶のなかに隠れとった猫を打ち殺してしもた。

「鶏を探せ」

 久兵衛さんは揖保川に流した鶏を探させたんや。それから、鶏を、命の恩人やゆうて一生大切に飼うたというこっちゃ。

 そら、あたしかてな、ようしてもろたで。長いこと、ええ商いさせてもろたもんな。

 まずは重畳(ちょうじょう)めでたしめでたし。

 

   この話は、宝暦年間(千七百五十年代)作用郡三日月の東新宿村那波屋春名忠成が出版した「西播怪談実記」より。

文/濱田 多代子

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